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―彼女―

「変わった? どんな風に?」 「これは単に私の気の所為かも知れませんけど、何だか急にサバサバしている感じと言うか、悠真君に無関心と言うか……。あの2人、親友みたいに今までずっと仲が良かったのに、もしかして喧嘩でもしたのかぁ」 「え?」 「あっ、ごめんなさい……! 今のは私の思い違いかも知れません、忘れて下さい…――!」  カナはそう話すと急に慌てた。克哉はその話に興味を抱いた。 「……そうか。その辺も彼に聞いてみるよ。他には何か知ってる事はある? 弟には交友関係の他に『彼女』の話しとかあった?」 「彼に彼女ですか……? いいえ、とくにそう言う話しは聞いてませんね。恋人はいなかったと思いますよ」  そう言って答えると彼は不思議そうに見た。 「……そうか、アイツの事だから一人くらい居ると思ったんだけどな。例えば『キミ』とか」 『えっ……!?』 何気なく言ってくるとカナは胸がドキッとした。そして顔を真っ赤にさせた。 「ちっ、違います……! 悠真君とは、そんな関係じゃないですよ! 彼とは普通に『友達』なだけですから!」 「そうかな。君達お似合いだと思ったんだけど」 「かっ、からかわないで下さい…――! ホントに私達、違うんですってば……!」 「そうなのか?」 「そっ、そうです……!」  顔を真っ赤にしながらら、慌てて答えると隣で笑った。 「分かった。そこまで言うなら信じるよ。でも、もしも胸に仕舞っている大事な思いがあったら、相手に伝えれる時にちゃんと伝えた方が良いと思うよ。いつまでも自分の中で引き摺る思いがないように、後で振り返って後悔しない為にもね?」 そう言って克哉は彼女の頭をポンと触ると優しく話した。だが、その瞳の奥は何故か儚げだった。カナは彼の寂しそうな顔を見て何だが心がもどかしく感じた。 「貴方にもそう言う特別な人がいたんですか?」  不意に尋ねると彼は静かに答えた。 「さあ。でも、『宝物』だったよ――」

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