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―彼女―
「宝物…――」
何気ない言葉を聞いた彼女は、そのまま黙って隣で話しを聞いた。
「あの、悠真君はあれから家に帰って来てますか…?」
「いいや、それがまったく帰って来てないんだ。バイト先や大学にも来てないみたいだし。それに携帯の電源もずっと切ったままになってるんだ。弟がこんな馬鹿なことをするとは思えないんだ。ましてや家族に心配をかけるなんてアイツらしくもない」
「お兄さん……」
「――これは俺の推測だけど、もしかしたらプライベートで何かが起きて。何もかもが嫌になって、自分から一時的に、失踪した可能性もあり得る。でも、それはアイツに限って考えにくいことだと思っている」
深刻な話しにカナは隣で考えた。
「もしかしたら何か事件に巻き込まれた可能性は無いですか? 家にも帰らずに。大学にもバイト先にも来てなくて、誰も彼の事を見てなかったら不自然に思いませんか……?」
「ああ、君の言う通りだ。俺も本当は何か事件に巻き込まれたんじゃないかって思ってる。でないとこれは不可解過ぎる」
克哉は彼女の前で正直な胸中を打ち明けた。
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