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―彼女―

「あの、警察の方はどうなんですか? 彼の捜索に動いてくれてますか?」 カナは不思議そうに尋ねると、克哉は小さなため息をついた。 「いや、それがどうも無理みたいだ。警察(彼ら)は当てにならない。余程の事や、事件性がハッキリして無ければ動かない。頼るだけ無駄だ」 「そっ、そんな……!? そんなの不当です、警察は市民を守るのが道理じゃないですか!? 例え事件じゃないとしても行方が分からない人を探して見つけるのが警察の役目じゃないんですか! 彼の身に何か起きたら遅すぎますよ!」  彼からその話を聞かされると彼女は顔を青ざめさせて身体を震わせた。自分の大事な人が急に居無くなる不安感と恐怖に苛まれた。 「君の気持ちは分かるよ。俺だってそうさ。俺達家族も警察の対応に正直言って呆れている。でも仕方がない。彼らが当てにならなかったら自分達で悠真を見つけるしかないんだ。きっと弟は何処かで生きている。不確かも知れないが、今はその可能性を信じてる。きっと『希望』はある。それが些細な小さな事でも、何処かに目印は必ずあるはずだ。だから俺は探す、警察の力を借りなくても必ず弟を見つけ出す!」 克哉はこの困難な状況でも、決して希望は絶対に諦めなかった。必ず自分の弟を探して見つけ出すと言う強い信念は揺るがなかった。彼の真っ直ぐな思いに、カナは隣で弟を大事に思う彼の気持ちに胸を打たれた。 「だってそうだろ、たった一人の兄弟なんだから――!」 「ええ、私もそう思います……! 悠真君は必ず、みつかります!」  

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