210 / 217

―彼女―

2人はそこで会話を交わすと、カナは克哉に自分の携帯電話を教えた。 「じゃあ、悠真君の写真とか、作ったビラとかが有れば後で連絡して下さい。そうしましたら私の方で自分のSNSにアップします」 「本当に助かるよ。実は俺も、行き詰まってた所なんだ。じゃあ、お言葉に甘えて君にも力を貸して貰うよ」 「任せて下さい、私これでも人気なんですよ? 手作りのアクセサリーとか、趣味で自分で作って販売しているのでファンの子達とか多くて、フォロアーの人も結構いるんです。だからきっと役に立つと思います!」 カナは頼もしく話すと自分の胸を叩いて、明るく振る舞った。 「君は本当に良い子だね。君と話せて良かった。じゃあ、また近いうちに会いに行くよ」  そう言って克哉は彼女の前から去った。カナは遠くから彼の背中を見送りながら佇んだ。そして不意に心の中で思った。  悠真君のお兄さんって、話し方から気さくで優しい感じの人だったな。それに何だか悲しそうな目をしていた。 「克哉さんか……」 彼女は彼の後ろ姿を見送りながら何故かその事が気になった。あの日、雨の日に見た光景が静かに重なる。カナは彼の悲しげな瞳の奥にあるものにふと惹かれたのだった――。  

ともだちにシェアしよう!