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【第19話】―蜘蛛の罠―

 前を見ると暗がりの中に男が人が佇んでいた。そして、夜空の雲の破れ目から光りが差し込む。青い月明かりの下に、髪の長い青年がジッと彼女を見ながら佇む。 「貴方は……?」 目の前にいる相手に彼女は恐る恐る聞く。青年は銀髪の長い髪を風に靡かせながら静かに語る。 「全部見てたよ。可哀想に、助けを叫んでも誰もこない絶望と恐怖は他人には計り知れない。そうだろ?」 青年は静かに話しながら彼女の傍に近付く。妖艷で怪し気な声に、瞳を奪われて見つめた。 「神はいつだってだ。君を穢した彼らは、この先も同じ事をくり返すだろう。君があの獣達に受けた苦痛や痛みや恐怖も全部忘れて生きる。そして、君は忌まわしい過去に囚われながらこの先ずっと呪われたように生きる。それこそ不平等だと思わないか?」 「ッ…――!」 「君を辱めたあの男達を天に任せず、自分で裁きたくはないか? 私なら神に『代わって』裁く事が出来る。どうだい、この手を取るか――?」  青年は彼女の瞳を見ながら右手を差し伸べる。謎めいた彼の話しに耳を傾けると、恐る恐る自分の手を差し出した。 「そっ、それって……?」  怪しいその言葉に、彼女は相手の顔を見ながら聞き返す。彼はクスッと静かに笑うと差し出した相手の手をとって耳元で囁いた。 「をするのさ――」

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