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お隣りのマツダくん②
(うわ……っ!カッコいい人…。)
「あ、ご、ごめんなさい!」
「いいのよー石蕗さん。あ、それウチのバカ息子の智裕 よ。ほれ、あんたお隣さん!挨拶しな!」
「えーっと、松田です。よろしくっす。」
「あ……えっと、石蕗です。子供も小さいのでご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。」
お互いぎこちなく会釈をする。そして拓海は智裕を見上げる。その様子見た、智裕の母は割って入る。
「この子、図体だけはデカいのよー。185cmとかそんくらい?」
「そんなにねーよ、182cmだっつーの。」
「大体一緒でしょーが。」
ギャーギャー言い合う姿から、親子仲は良いらしいことが分かる。そして智裕は拓海を横切って家に入っていく。すれ違った時に、拓海は智裕の香りを認識した。柑橘系の、甘酸っぱい香り。
その漂いに、拓海の心臓は、大きく打った。
「……あのっ!長々とすいません、これからよろしくお願いします!」
「あらあら。じゃあ、何かあったら何でも聞いてね。」
この日はこれで終わった。
その夜、拓海は娘をお風呂に入れながらも、あの時の心臓の高鳴りを思い出しては恥ずかしさで沈みそうになっていた。
そこから何気ない挨拶や、お裾分けなんかで交流していくうちに、拓海の高鳴りは確信になっていく。
(俺……智裕くんに、一目惚れだったんだ。)
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