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お隣りのマツダくん④
告げられた智裕は頭の中がぶっ飛んでいた。どれだけ思考停止していたか、気がついて拓海の方を見たら、拓海は大粒の涙を流していた。
「うわぁ⁉︎つ、ツワブキさん⁉︎な、ど、ど、どうしたんすか⁉︎」
「ご、ごめんね!こんな…男なのに……気持ち悪いよね……忘れて、いいから。」
「いや、それは無理っす!」
今の出来事は17歳の智裕にとっては人生の転機 に近いものだった。
それに「キモい」なんていう負の感情は不思議と生まれない。それどころか全身が熱くなる。そして心臓も高鳴っている。
何度か深呼吸をして心も体も落ち着かせて、智裕は冷静になる。出来るだけ。
「い…いつから……その、好き、に…なりました?」
「……初めて、会った時……。」
智裕は拓海との初対面をぐるぐると記憶を手繰る。
「いや、俺そんな好印象与えた覚えないですよ。フツーにオフクロと口喧嘩してるし。」
「そんなことないよ!すごく……そのカッコいい人だな、って。」
「いやいやいや!それこそ俺の家族もクラスメートも眼科勧めますよ⁉︎今日だって二股かけられた上にフラれましたし!」
「……彼女、いたんだ…。」
「はい、今日のホームルームまでいました。」
(ああ、現実を言葉にするとすげー虚しくなってくる。)
そして否定はしたけれど、「カッコいい」と真っ直ぐに褒められたことが初めてだったので、智裕はますます心臓が高鳴る。
_松田って、何気にカッコいいんだよねー。
_まぁモテそうな雰囲気はあるけどねー。
今まで出会った女子達にはまぁまぁな評価しか下されたことがなかったので、明日は教室で開口一番「ざまぁ!」と言える気がする。
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