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ツワブキさんとの蜜月④

「ごめんねー、昨日は何もお構い出来なくて。」 「いえいえ、ほんと助かりました。」  午前7時少し過ぎ、智裕は制服をテキトーに着て自分の家に戻る為に石蕗(つわぶき)家をあとにしようとしていた。 「……えっと…智裕、くん……その……。」  別れが惜しいのか拓海は少しだけ(うつむ)いている。その姿も可愛らしい。 「ま、また……来ますね。」  まだ少し早い朝、今日はゴミの日でもないから廊下には誰もいない、気がして智裕は昨夜のように拓海に触れるだけのキスをした。  拓海は驚き、赤くなって、でもフワリと笑って「じゃあね。」と言って玄関のドアを閉めた。智裕は少しの余韻に浸って、自分の家に向こうとしたら、人影があった。 「おはよー。」  気の無い挨拶が智裕の脳内にズガン、と響いた。 目が隠れそうな前髪にダルダルと着崩した智裕と同じ学校の制服を着た彼がその声を主だった。 「み、宮西(みやにし)……お、おはよ……。」  同じクラスで幼馴染でこの集合住宅(別の棟)に住んでいる宮西椋丞(リョウスケ)。常にローテンションで口数も少ない男子だった。 「………これ、届けに来た。」  宮西がポッケから取り出したのは、目の焦点があってないウサギのキーホルダーが付いた鍵。それは昨日失くしたと思われた智裕の家の鍵だった。  智裕はそれを無言で渡され、これを無言で受け取る。 「えっと……。」 「じゃ、またあとで。」 「お、おう……。」  智裕は普通に終わったこのやり取りに恐怖を覚えた。スタスタとエレベーターに向かう宮西を目で追い続けていると、宮西は視線に気付いて振り返る。  そして怪しく、口元でニヤリと笑う。 「ーーーーー……っ!」  恐怖で声が出ず、智裕は目の前が真っ暗になった。  滅多に笑わない宮西が笑った時は、宮西にとって面白いことが起こって発展する合図だった。 (見られてたあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!)

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