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ツワブキさんと保健室④

 昼休みを告げるチャイムが鳴ったと同時に智裕は教室を飛び出した。ダメ元で保健室に向かう。  全速力で走ったお陰で、保健室の前には1人もギャラリーがいなかった。引き戸を力一杯開けると、ビックリした様子の白衣を着た拓海がいた。 「だ……誰……え?智裕くんっ⁉︎どうして此処に…。」 「それはコッチの台詞だよ…。」  保健室をキョロキョロと見渡したが、拓海1人だけらしい。智裕は入ってドアを閉めると、ついでに鍵をかけた。 「ちょっと…!」 「え、えぇ⁉︎」  か細い拓海の腕を智裕は引っ張り、そのまま空いているベッドに拓海を少し乱暴に投げて、カーテンを閉めてオフホワイトの密室を作り上げた。 「昨日、俺制服着てたし、ここの高校って知ってたろ?何で教えてくれなかったんだよ。」 「ここの制服だって知らなかったんだよ……智裕くん、ここの生徒さんだったの?」 「2年5組出席番号18番、松田智裕…はい、学生証。」  ブレザーの内ポケットから生徒手帳を取り出し、後ろに入れてる顔写真付きの学生証を拓海に見せる。 「ほんとだぁ……。」 「あーもー!どうすんの!近所の主夫ってだけでもちょっと危ういのに、生徒と教師とかマジでドラマじゃねーか。」 「あー…本当だ。」  拓海は智裕に感心するような反応。それを見ると智裕は「はぁぁ」と深い溜息を吐く。 「しかも(ウチ)って一応校区だし、団地でも何人か生徒いるから……俺も気をつけるよ。」 「うん、わかったよ。」  智裕は確信した。拓海は俗に言う「天然」だということ。  智裕の忠告も本当に理解したのか分からない。  それに、昨夜智裕も当てられた色気は拓海の無意識で出されている。

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