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マツダ兄弟戦争勃発④
飛び出した智之は廊下に出てキョロキョロと見回す。
半べそをかきながら、まずはエレベーターの方へ、誰もいない。そして反対側の外側非常階段に一気に走る、いない。
10階は最上階でその上には踊り場と消防用給水タンクしかない。両親には危ないから登るなと言われるその階段を1、2と上がる。
「ん……んん……。」
クチュ、チュ
小学生の智之にとっては聞いたことのない水音が響いてくる。なんだか気まずくなった智之は、忍び足で、恐る恐ると階段を登り、音と人の気配が近くなってきたらばそーっと先を覗く。
智之はその光景に固まってしまう。
「あ……も、だめだって……ここ、外…。」
「だって家だと、30分じゃ足りなくなる……ね?」
「……ともひ、んんっ。」
声の主は先ほどまでポテチの味で大揉めしていた実兄と、その兄の膝の上に乗っている綺麗な男性だった。
(あれって、隣の茉莉ちゃんのとーちゃん⁉︎何でにーちゃんと……。)
智之は声を両手で塞いでそろりそろりと、階段を降り、廊下に足をつけた瞬間、一目散に自分の家に駆け込んだ。
大袈裟な音が家中に響き、奥から母が顔を出してきた。
「智之⁉︎何してんのさっきから。」
「う、うるせぇ!」
「鍵は開けてんの?お兄ちゃん入ってこれないでしょ!」
「開けてるよ!」
智之はサンダルを脱ぎ捨てて自室に入るとドアを激しく閉めて、荒い呼吸を整えることに努める。
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