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マツダ兄弟戦争勃発⑥
「智之……。」
「え?」
「今日智之が見たこと、誰にも言っちゃ駄目だよ。」
「な、なんでだよ⁉︎だって男ドーシだぜ!変じゃんか!」
「そ。男同士だから、お兄さんのやったことはイケナイことなんだ。」
真剣な表情をして大介は智之ににじり寄る。智之は後ずさりするが、壁についてしまった。
そして大介はすかさず壁に手をついて智之を追い詰めた。顔を近づけて脅す。
「お兄さんが、いじめられたり、悪者にされるかもしれないよ?それでもいいのかな?」
智之は肩を震わせて小さくなり、下を向いて涙を流しながら「いやだ。」と呟いた。
「だから、誰にも言わないこと……約束しろよ。」
「うん……言わない…絶対、い、言わない!」
大介は「よく出来ました。」と智之の頭をポンポンと叩いた。
「智之ー、宮西弟ー、メシだってよー。」
智裕が無遠慮に智之の部屋のドアを開けて2人を呼んだ。
大介だけ返事をしたのを確認すると、智裕はすぐに離れて行った。だけどまだ智之は腰を抜かしてしまったのか動けないでいる。
「智之、どうしたの?早く行こう。」
「俺……にーちゃんの顔、見れねぇよ……。」
小5の男児に兄の濃厚なキスシーンを目撃してしまったショックは計り知れない。大介はこの状況を理解出来た。
「智之ー!宮西弟ー!早くしねーと唐揚げ食べちまうぞー!」
「はぁ⁉︎ふざけんな!俺が食うんだー!」
羞恥は食欲に勝てなかった。
ポテチから始まった兄弟戦争は唐揚げによって終結した。
食卓へ駆けていく智之を見ながら、大介は不敵な笑みを浮かべた。
「可愛いなぁ、智之は。」
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