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マツダくんは常に災難⑩

 午後11時、茉莉ちゃんと父は既に仲良く眠っていた。  母は明日の朝食の準備や残った家事を済ませてダイニングでテレビを見ながら寛いでいた。  智之は明日が休みだからと自室でテレビゲームに夢中になっている。  智裕もソファベッドに寝転がりヘッドホンで音楽を聴きながら漫画を読んで、いつも通りの夜を過ごしていた。  すると珍しく家の固定電話の音がした。ダイニングにいた母が対応したようで、それはすぐに止んだ。  ガチャ、と智裕の部屋のドアが開いた。それに気がついて智裕はヘッドホンを外す。 「智裕、星野先生から電話。」 「ほっしゃん?こんな時間に?」  母が差し出した電話の子機を受け取り「もしもし。」と問いかけた。 『おー、松田か。すまんな、夜遅くに。』 「いーっすよ、起きてましたし。それよりどうしたんですか?」 『いやー、さっき懇親会がお開きになったんだけどな、石蕗先生がすげー()まされてダウンしてんだよ。松田んチって石蕗先生と隣だろ?今タクシーで向かってるから運ぶの手伝ってくれよ。』 「わかりました……けど、た…石蕗先生、大丈夫っすか?」 『いやこれ大丈夫じゃねーよ。アルハラだよアルハラ。コップ1杯のビールで真っ赤になる人に焼酎なんて飲ませやがるんだよ。ほんとクソだよな体育会系って。』 (いや、ほっしゃんも十分体育会系だけど……この時代に男子生徒にフツーにゲンコツするし。) 「とりあえず、入り口で待ってますわ。」 『すまんな、よろしく。』

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