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ツワブキさんの本能①
エレベーターでエントランスに出たら丁度タクシーが到着していた。星野 は肩にグデグデになって動かない人間を抱えながら支払いを済ませて降車した。
「石蕗 先生、着きましたよー。」
智裕 は急いで2人の元へ駆ける。
「ほっしゃん!うーわ…予想以上かも。」
「悪いな松田、ちょ、1回そこの階段に降ろすぞ。」
入り口の段差に拓海を降ろすと、拓海 はそのままグデン、と横に倒れた。
「んん……。」
「はぁ…だから飲み会なんて出なくて良かったっつーのに。」
「なんか、ほっしゃんキレてる?」
智裕と星野は横たわっている拓海を挟むように段差に座った。
星野は懐からタバコを出して、火をつけると、ふー、と煙を吐いて落ち着く。
「体育の細田 、お前も知ってるよな?」
「あー…3年の体育の…柔道の顧問だっけ?」
「そ。あいつ俺とタメでまだ未婚の素人童貞なんだわ。」
「……ほっしゃん、いいの?生徒に先生の個人情報とか。」
「したらよぉ、石蕗先生が優しく接したの勘違いしやがって、泥酔させてお持ち帰りまで計画してたっぽいんだよ。それが気に食わなくて俺がお持ち帰りしてやった。」
智裕は普通に顔を真っ青にした。
「でででででも!た、つ、石蕗先生は男じゃん!」
「お前だって男なのに石蕗先生で勃起したんだろ?」
星野はまたフーと煙を吐いた。智裕の方は一切見ないまま。
智裕は固まってしまった。
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