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ツワブキさんの本能⑤

 懇親会が行われたのは学校からは2駅ほど離れた場所にある和食料亭の宴会場。滅多にない飲み会で教師たちは浮かれまくっていた。  そして今晩の主役は新任の教師たちで、その中には擁護教諭の拓海も当然含まれていた。  星野の隣には、同期の細田が座ってむさ苦しい状態になっていた。  いい感じで日本酒が入った細田は星野に訴える。 「いいよなぁ…石蕗くん。マジで男なのかよぉ……。」 「どう見たって男だろ。」 「でもさ、あんなに優しくしてくれたのさぁ、赤羽の風俗嬢以来だぜ?俺、石蕗くんならイケるわぁ。」  この時点で星野は嫌な予感がしていた。  そこからは細田と拓海を注意して見守ることに徹したが、2年生担任教師につかまって目を離した隙に2人の姿は宴会場から消えていた。  星野はどうにかして離席し、2人を探して手洗い場に向かった。  しかし居たのはグロッキーになった他の新人教師だけだった。店中を探すと、外にある喫煙所の近くに人影があった。 「や、やめてください……!」 「いいじゃないですかぁ、こんなお堅い場所の酒より、いいじゃないですかぁ。」 「俺、本当にお酒ダメな……んっ!」 「ほらほら、グイッといって下さいよぉ。」  すでにフラフラで何とか正気を保っていた拓海に細田は無理やり酒を飲ませていた。  しかも焼酎を瓶ごと。  その拓海を支える細田の手は拓海の服の中に侵入していた。 「細田ぁ!」 「ん…?げ、星野⁉︎」 「てめ馬鹿か!その人本当に酒飲めねーみたいじゃねーか!命に関わったら責任取れんのかよ!」 「だってよ、ここまでしねぇと絶対ヤれねーじゃん。」 「お前マジ最悪だな。石蕗先生は俺が送ってくから、お前はさっさと便所にでもいけ!」  星野が凄んで脅して細田はそそくさと退散した。そして支えがなくなった拓海はその場で倒れ込んだ。 「石蕗先生、荷物取ってくるから少し待ってて下さいよ。」 「ご…めん……ともひろ…くん……おれ……。」  拓海は泣いていた。  いやらしく性的に細田に触られたことがかなりショックだったのだろう。 (トモヒロ、って俺のクラスの松田のことか。そういや石蕗先生の家と松田の家、同じ団地だったな。)

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