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ホシノ先生の回顧①
泥酔していた同僚の石蕗 を送り届けた星野はすぐにタクシーを呼ばず、その場所から駅まで歩いて行くことにした。
石蕗の恋人は星野が受け持つクラスの生徒の松田だと知り、松田のことをよく知る星野としては少々心配していた。
しかし先ほどの2人を見て、そのネガティブ発想は解消されていた。
団地と住宅だらけの場所だと、午後11時にもなれば街灯がポツポツと灯っているだけだった。
ため息を思い切り吐きながら、ふと上を見ると、今日は雲のない快晴だったおかげで星と月がハッキリと見える。
「星野先生?」
不意に声をかけられた星野は、声のする方を向く。そこには見慣れた顔が見慣れない服装でビニール袋を提げて立っていた。
「江川 か。」
「何でウチの団地の近くいるんですか。先生んチ最寄り駅も違いますよね?」
「あー……説明しなきゃだめ?」
「別に詮索はしませんよ。大竹 じゃないんで。」
星野は予想通りの答えが返ってきたので少しだけ笑ってしまった。江川はその笑いに対しても何も反応をしなかった。
星野は近くの明かりが目に入り、そちらを見るとポツンとある自販機。
「江川、ちょっと酔い覚ましに付き合えよ。」
「は?」
「付き合わねーと内申点落とす。」
「訴えますよ。」
職権乱用の言葉を吐いて、江川と自販機に向かう。
星野は冷たいブラックコーヒーを、江川はサイダーを選んだ。そして適当に、閉店しているスーパーの搬入口のような場所で屯 ろする。
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