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ホシノ先生の回顧④
「俺、松田のことは高校からしか知らないですけど、あいつマジで良い奴過ぎるとこあるからなぁ。ヘタレのくせに正義感は強いし。」
「そうそう、ヘタレのくせに妙なとこで男気はあるんだよな。」
「だからこの前、元カノに二股されたの知って、俺そいつのクラス乗り込んで行っちゃいました。」
「お前は変な行動力があるな。」
「泣かれて女子敵に回して終わりましたけど。言いたい事は言えたからいいかなって。」
江川は高校に入学してからずっと自分のことより周りの人のことを考える行動をしていた。
思い遣り、そんな言葉で片付かないと星野は見解していた。そして恐れている。
「江川、本当はうちの高校に入るつもりじゃなかったんだよな。」
「………そうですけど、今はここで本当に良かったと心から思えてます。こうして担任教師と夜中にスーパーの搬入口で屯ろするなんて絶対出来ないですし。」
江川は星野の方を向いて滅多に見せない心からの笑顔をする。
星野はそれを見ると頬が緩んでつられて笑い、またコーヒーを飲む。
「うちは素行が悪いんじゃなくて自由な校風だからな。」
「わかってますよ。」
「そんでさ、お前はそろそろ周りばっかじゃなくて自分だけを見てもいいんじゃねーの?」
急に教師らしい口調になるから、江川は驚いて再び星野の顔を見る。
星野は懐からタバコを取り出し火をつけて煙を吐いたら、そのまま空を眺めた。
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