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穏やかな休日のフタリ④
シャワーで身体をかけ流すと、すこし戸惑いながら拓海は湯船に入る。
智裕は拓海の細い腕を引き、その身体を自分が開いた脚の間に収め、後ろから優しく抱きしめる。
「拓海さん、意外に筋肉あるよね。」
「うーん、もっと細かったんだけど、まーちゃんを毎日抱っこしてたら鍛えられちゃったかも。」
「身長ってどんくらい?」
「うーん、と……166cm。男にしては小さいね。」
「でも俺には丁度いいや。」
智裕は拓海の首筋に顔を埋めて、またグッと身体を自分の方に引き寄せる。
拓海は静かに智裕の左腕に触れると、筋肉や骨とは違う皮膚の感触に気がついた。
「……智裕くん、この傷…。」
「あ……あぁ……えっと…。」
「ご、ごめんなさい……言いたくないなら。」
「いや別にそういうわけじゃないから!謝らないでいいよ!チャリで転んで縫ったとかダサすぎて言いづらかっただけだから!」
智裕はすこし伏せたかと思ったら慌てて顔を真っ赤にした。
その智裕の様子に拓海は違和感を覚えた。
「ギプスして登校したらマジでクラス中から爆笑されてさぁ、超つらかったー。」
「そ…そうなんだ。」
「なんかさ、スポーツマンが怪我でリタイアしてーとかそういうカッコいい感じだったらどんだけ良かったか…はぁ。」
いつものヘタレな智裕だった。そして理由もヘタレだった。
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