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マツダくんの傷痕④
「当然のように学校を辞めると言い出したんですが、クラスの連中が許すわけもなくて、今に至ってますよ。松田を糾弾した奴らをボコボコにした委員長 、リンチした先輩の性癖を正門の掲示板に張り出した野次馬 、野球部の奴をモデルにとんでもない本を作り出したオタク 、野球部の先輩に告られたがトラウマ級の断り方をした高嶺の花 ……あー忙しかったなぁ始末書とか指導書とか保護者面談とか家庭訪問とかなぁ。」
思い出す星野の後ろからドス黒いオーラが発生して、石蕗は思わず怯んでしまった。
「……智裕くん、初めて会った時にそんな感じ…しなかった、です。」
「初めて会った時っていつですか?」
「昨年の11月頃です。俺が引っ越しの挨拶で智裕くんの家に行った時……です。」
「11月かぁ……もう松田も落ち着いてた頃ですね。」
「あの…それで、智裕くんは左腕、完治してるんでしょうか?」
石蕗の顔は不安でいっぱいだった。星野は石蕗の本気度に少々驚いたが、安心させるように笑った。
「まぁ日常生活に支障は出ない程度にはね。リハビリは断念しているので左腕への極端な負担さえ避ければ心配ありませんよ。」
「そうですか……。」
「あいつ、ああやって馬鹿そうにしてますけど……心の傷や虚しさは、きっとまだあるでしょうね。」
星野の言葉に、石蕗は目を伏せてしまった。
(智裕くん、あんなに素敵で明るいのに……俺なんかよりずっと、背負っているものがあったんだ…。)
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