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マツダくんの傷痕⑥

 宮西(みやにし)は恋人の里崎(さとざき)と一緒に宮西家のキッチンに立って夕飯の支度をしていた。 「ヨーコさん、ずっと帰んなくていいの?」 「うん、昨日からどっちも出張でいないし。」 「ふーん。」  里崎は宮西と交際してから、こうしてよく宮西家で夕飯を一緒に食べている。  宮西の弟と妹も蓉子を実の姉のように慕っている。里崎の家は両親共に上場企業の役員を勤めていて、家には滅多に帰ってこない。  なので狭くて少し汚くても、宮西家の方が里崎にとっては心地が良かった。 「椋丞(リョースケ)さぁ、進路調査書、書いた?」 「いや……だってあれ中間前に出せばいいんだろ?」 「そうだけどさぁ。」 「俺は就職だよ。夜の方はババアの趣味みたいなもんだけど、昼間の仕事がキツイんだってさ。」 「そっかぁ……。」 「………松田、どうすんだろうな。」 「やっぱ心配なんだ、松田のこと。」 「まぁ、少しだけ、な。」 「照れなくてもいいよ。私と江川くんも心配しちゃってるし。松田、元気そうにしてるけど……ね。」  そろそろ公園や子供センターで遊んでいた弟たちが帰ってくる時間になった。  今日の夕飯はチキンカツ、大根と水菜のサラダ、甘い卵焼き。大皿に盛ったそれらを食卓に置いていると、バタバタと元気にチビ達が帰ってきた。  小2の弟、晃介(コウスケ)はグローブとバッドを居間の隅に置いた。 「晃介、お前ドロドロ過ぎ。先に風呂入れ。」 「リョースケ!俺今日めっちゃスピード出た!」 「165キロ出てからめっちゃスピード出たって言え。」 「なぁなぁ!俺もトモくんみたいにめっちゃ三振取る!」 「おー、まずは4年生になってからだな。」 (ま、俺らが心配したとこでしゃーないか。)

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