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ツワブキさんに好敵手?③
「まっつんだよね、U -15の!覚えてない?俺、国体の時とかに一緒の合宿所だったじゃん!」
興奮気味に喋りかける彼を智裕はじっと見て、記憶を巡らせる。
数秒「うーん…」と唸ると閃 いたように「あーーーー!」と大きな声を出した。
「お前男子バレーの水上 か!」
「そうそう!まっつんこの高校だったんだ。」
「でも水上、この高校バレー強くねーじゃん。なんでいんの?」
「バレーはもう俺は実業団のチームに入ってやってんだわ。学校じゃ帰宅部扱い。」
「そっかそっかー!つかお前1年だろ?松田さんって呼べよ。」
「えー、だってまっつんって先輩っぽくないもん。先輩っぽいのピッチャーやってる時だけだし。」
「何で⁉︎俺そんな威厳ない⁉︎」
「ないないー。しかもまっつん野球辞めたらしいじゃーん。」
「何で知ってんだよ、怖ぇよ!」
拓海は2人のやり取りと、そして今の智裕のリアクションに驚いた。
先日、拓海は本人から訊 けなかったくらいタブーだと思ってた疑問だったのに、智裕は水上に笑って返していた。
「ここの野球部、去年マジでまっつん頼み過ぎていつかぶっ壊れるって思ってたんだけどねー。見事的中だったねー。」
「そうそう!あんな連日投げてたらしんど……い……。」
智裕はやっと拓海が視界に入った。拓海は明らかに落ち込んで下を向いて黙々と水上の膝の手当てをしていた。
それを見て、智裕は言葉が出てこなくなった。自分は拓海に嘘をついていたからだった。
「あ!俺移動教室だから!じゃあな水上!」
「おー、またなー。」
ガラッ バタンッ
(やってしまったぁぁぁぁぁぁぁぁ!拓海さんには左腕のこと超嘘ついてたの忘れてたぁぁぁぁぁぁぁぁ!)
智裕は頭を抱えながら教室へ戻って行った。
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