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オオタケくんも災難⑨
夜9時の高校の最寄駅の前のコンビニ。
駅前のマンションに住む直倫は飲み物を選んでいた。すると隣に人が来る。
183cmの自分と同じくらいの高さだったので少し気になってチラ見する。
「よぉ、赤松じゃん。」
「……あーっと…同じクラスの水上くん?」
「何で疑問形だよ。それに水上でいいっつの。お前家近いんだ。」
「まぁな。水上、こんな時間まで制服なんだ。」
「練習帰りだしな。練習場が2駅先なんだよねー。」
あまりに目立つ2人は、他の客にジロジロと見られていた。
それに気がついて、直倫は2Lのスポーツドリンクを、水上は1Lのミネラルウォーターを選び、支払いを済ませて一緒に店を出た。
「そういや赤松って野球部だっけ?小さい時からやってんの?」
「小3からやってる。」
「ふーん……何でウチの高校だったんだ?」
「………去年の県大会の準決勝…見たから、かな。」
直倫はペットボトルを開けて、ドリンクを一口飲む。
「……準決勝で、此処のピッチャー凄かったから。あの人の後ろで守ってみたいと思った。」
「だけど、その人はいなかった…だろ?」
「投手の先輩いるけど、あの左腕 に比べたらヘロヘロだった。」
「真面目な顔でディスるのかよ。」
「事実だったからだ。何があったのかも部内ではタブーにされてて俺は知らない。」
また一口飲んで、キャップを閉めた。
「そのタブーにさ、お前の好きな大竹裕也が絡んでた、って聞いたらどうする?」
直倫は水上の不敵な笑みを見て、その場で固まってしまった。
「そのお前が憧れてる投手、お前が越えて、先輩奪っちゃえよ。」
「俺が、憧れてる投手……?」
「そ。2年5組の松田智裕がお前の憧れなんじゃないのか?」
直倫は清田の言葉を思い出した。
『5組の大竹ってさ、同じクラスの松田とホモ説浮上してんだよ。』
(まさか……大竹先輩の相手って、俺の憧れた左腕 の…!)
そして水上に、耳元で囁かれる。
「俺も協力してやるから、さ。」
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