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フタリの和解③
智裕の声は上ずって泣きそうになっていた。拓海は智裕の顔をずっと見ている。
「ちゃんと…本当のこと……言うから……。」
智裕は拓海から離れて立つと、長袖のシャツを脱いだ。
明るい中でよく見たらかなり引き締まっている筋肉、普段の智裕は着痩せしていることがわかった。その身体は普通の男子高校生ではなかった。
そして左肘 を拓海にしっかりと見せると、そこには痛々しい縫合の痕があった。
「俺は小3の時に近所のリトルリーグのチームに入った。小5になった時にプロ野球チームのジュニアチームに入った。中学生の時は少し離れた場所の硬式のチームに入って、それから日本代表にもなって、クッソ強いアメリカ相手に無失点1安打の成績を残した。強豪高校から結構スカウト来たけど、厳しい寮生活にビビって今の高校を選んだ。」
きちんと話す智裕は、自然と涙が溢れてきていた。拓海もつられて目頭が熱くなってくる。
「高校は推薦で、野球部入って、すぐにレギュラーになって、先輩たち差し置いてエースナンバー貰った。俺本当は嫌だったけど、監督にすげー怒られて、自分なりに努力してエースになろうとした。だけど先輩らの反発買って、大事な決勝の前に、すっげーボコられて腕の骨と筋がぶっ壊れて手術して入院した。でも俺、エースだから、あと2年やんなきゃいけなくてすげーリハビリ頑張ったけど……けど……もう、投げらんなくて……俺……俺…。」
「もういいよ!わかったから!」
拓海は智裕に抱きついた。そのまま強く抱き締めた。
智裕も拓海も涙が止まらなかった。
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