132 / 1000

オオタケくん争奪戦④

「おい、大竹か松田、今すぐどっちか折れろ。それか死ね。」  いつまでも続く攻防戦に嫌気がさした江川がいつもよりワントーン落とした声を出し、拳をポキポキと鳴らす。  江川の半径3mは世紀末だった。 「おおおおお俺の貞操がかかってんだよ⁉︎俺は折れねーぞ!トモが折れろ!それか死ねぇえ!」  世紀末の拳王と化した江川の後ろに隠れながら裕也は抵抗する。虎の威を借る狐とはこのこと。 「うっわぁ…。」 「大竹、クズすぎるわぁ…。」  男子も女子も軽蔑の目を向ける。そして智裕(ヘタレ)はガクガクブルブルと子羊のように震えて、降参した。 「えっと…赤松くん、だっけ?あのヘタレ王と何で勝負するのかなぁ?」  里崎は近くに寄って、直倫に訊ねる。直倫は軟式野球ボールをポケットから取り出した。 「ストラックアウト、3球勝負でお願いします。」

ともだちにシェアしよう!