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オオタケくん争奪戦⑩

 そして智裕は2球目は大暴投、3球目は距離が足らず、結果は0本だった。 「俺の勝ちですね。ありがとうございました。」 「あーそうだよ、お前の勝ちだよ。」 「では今日から遠慮なく、俺は大竹先輩にアタックさせていただきます。」 「てゆーかそもそも俺は大竹とはただのクラスメートだから。誰に吹き込まれたか知らねーけど、俺は別に付き合ってる奴いるし。」 「はぁ……。」 「ま、頑張れよ、赤松くん。」  智裕はニヤリと笑って直倫にエールを送り、右肩をグルグル回して撤収しようとした。 「まっつん、もうみんなに嘘つくのやめなよ!」  ギャラリーの中から一際大きな声で、そう野次られた。その言葉に智裕の動きは止まった。  拓海は声のした方を見ると、そこには笑う水上がいた。 「ねぇ、まっつんさ、本当はもう投げられるでしょ?みんなを騙すの良くないと思うよ?」 (え?どういうこと…?水上くん?智裕くんは、もう嘘ついてないって……。)  拓海の心臓はドクン、ドクン、と不安な鼓動が打つ。

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