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マツダトモヒロの覚醒①

 水上(みずかみ)の言葉に、智裕(トモヒロ)を知る人物は皆黙ってしまった。それ以外の野次馬は騒ついていた。 「ねぇ、まっつんって左投げだよね?何で右で投げて負けてんの?」 「おい!トモは左腕ケガしてんだぞ!」  裕也(ユウヤ)は思わず大声で反論した。だが水上は冷静だった。 「知ってるよ。それで手術して入院して去年は夏休みも潰れたんだよね。」 「そうだよ!だから左腕は使えねーってわかるだろ!」 「本当素人はすごいよ、どんだけ騙されてんの?まっつんはリハビリ。」  反論していた裕也も黙ってしまった。智裕は的にしている空き缶をじっと見つめていた。 「去年の11月にリハビリをっていうのは嘘だよ。あんなことでまっつんの選手生命が断たれると思う?」 「水上。」  いつもより低い声で智裕は声を出した。  その声をクラスメートは久し振りに、そして拓海(タクミ)は初めて聞いたので肩を震わせてしまった。 「もういいよ。投げればいいんだろ。」

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