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マツダトモヒロの覚醒③

 あまりにも長く感じたこの沈黙、実際には1秒として保っていない。  事情を知らない野次馬たちは一斉に沸いていた。 「すげー!なんだあれ!」 「マジでプロ野球じゃん!」 「真っ直ぐかと思ったらグインって曲がったぞ!」 「あんな人ウチの学校いた⁉︎超カッコよくない⁉︎」  口々に放たれる声、いつもヘタレな智裕が一瞬でヒーローになっている。  拓海は訳がわからずに周囲をキョロキョロと見る。  拓海の隣にいた江川は怒りの感情を隠せずにいた。宮西は本当に真顔だった。大竹はなぜか不安そうな顔をしている。  2年5組は里崎、高梨をはじめ女子生徒は困惑し、男子生徒も江川と似たような感情を抱いているようだった。 「松田ぁ!」  江川の怒鳴り声で、クラスメートは一斉に智裕に駆け寄った。2年5組に囲まれていた拓海はポツンと残されてしまった。

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