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マツダトモヒロの覚醒④
「先生、あれがまっつんの本当の姿ですよ。」
拓海は後ろから声をかけられて振り向くと、嬉しそうな顔をする水上がいた。
「あんな安い挑発に乗っちゃうところも変わってなくて驚いたけど、でも俺の言葉がキッカケで克服してくれたのかな?」
「え…っと……これはどういうことなの、かな?」
「まっつん、身体は完全に治ってて、あとは精神的な問題だけだったって。俺、まっつんと外科のかかりつけ医が一緒だから聞いてたんだ。」
「……そう、なんだ。」
「あの鋭いコントロールが完璧なボールを見れて、俺本当に嬉しいんですよ今。」
頬を赤らめて無邪気に笑う水上を見て、拓海は胸が痛くなる。
「俺もまだ子供だけど、それでも日の丸背負って戦ったことあるから、まっつんの気持ちは分かっているつもりなんです。同じような境遇だからこそ、俺は支えになれると思ってます。」
「支え…に……。」
「まっつんのこと好きだから、ただそれだけなんで。」
そう言って水上はグラウンドを去って行った。
拓海はまた更に胸が痛む。拓海は耐えられずに走って校舎に戻ろうとした。
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