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マツダトモヒロの覚醒⑦
星野に言われた通りに校舎裏に行くと、膝を抱えて泣いていた女子生徒がいた。
(ついこの前、俺が若月くんにここで慰められたんだよね…。)
「高梨さん。」
「……ツワブキ、ちゃん…。」
拓海は高梨の隣に腰を下ろした。高梨は懸命に涙を拭う。
「……俺は何も知らないから、話を聞くだけしか出来ないけど、それで高梨さんの心が楽になるなら、悲しいことや怒ったこと、全部話してみてくれる?」
「ツワブキちゃん……ごめんね………ごめん、なさい。」
高梨の背中をさすりながら、拓海は黙って、高梨からの言葉を待った。
高梨は益々泣きながら、言葉を紡ぐ。
「私ね、松田のこと……ずっと昔から好きなんだ……だから、だから…あんな情けない姿、見たくなかったから……。」
拓海は高梨の告白にまた心臓を掴まれたような気持ちになるが、慰めることはやめなかった。
「……小学生の時から…ずっと本当は松田が好きだったけど……あいつは天才で…ずっと野球ばっかで、遠征で学校休むこと多かったし……国際試合なんか…テレビで見て……私なんか…って思ってた。」
高梨の言葉が、拓海には鋭利なナイフのようだった。
高梨の智裕への想い。本当に好きだからこそ怒鳴ってしまったという後悔。
「ツワブキちゃんから松田こと横取りする気はないし……でも…好きだから……ずっと逃げ続ける松田を……見たくない…からぁ……。」
「高梨さん……。」
包み込むように拓海は高梨を抱きしめた。
(俺は……智裕くんのことを想って、こんなに涙を流せる?本当に智裕くんのこと、考えてる?俺は、今が居心地が良いから…?どうして俺は、智裕くんが好きなの?)
拓海の頬にも涙が伝う。
「高梨…さん……ごめんね……俺…智裕くんを…全然知らないくせに……。」
「ツワブキ、ちゃん…?」
「俺は……。」
(智裕くんの隣にいる資格なんて、ないのかもしれない……。)
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