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マツダトモヒロの覚醒⑧
2年5組は全員、星野に連れられて教室に戻った。
教室はまるでお葬式のような静けさに包まれた。
「で、まず、何で下校せずにグラウンドで騒いだ?」
「……すいません。なんか俺が原因みたいっす。」
挙手しながら裕也はそう答えた。星野はまたひとつため息をついた。
「まぁそれはもう済んだことだから追及しねぇよ。全員が全員、松田を囲んで何してた?江川、お前暗殺者みてぇなツラしてたぞ。」
「………松田が嘘ついてたから問い詰めただけです。」
江川は珍しく星野から目をそらしながら低い声で答えた。星野は江川を少し気にしつつも話を進める。
「で、そんだけで何で高梨が泣くんだ?松田。」
「………それはわかりません。」
「……お前、高梨に何か言ったか?」
「江川に……もう投げられんじゃねーかって言われて……やだ、投げないって言ったら…勝手に、高梨が怒っただけっす…。」
智裕は下を向いたまま不貞腐れたように答えた。
「……松田、お前みんなに何て嘘ついてたんだ?」
「………リハビリのことです。」
「左腕のか?」
「はい……本当は、医者からは完治したって言われてました……。」
「そうか……完全に治らないっていうのは嘘だった、と。」
「……はい。」
星野が呆れたようなため息を吐くと、1人の男子生徒が立ち上がった。
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