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マツダトモヒロの覚醒⑩
星野はそのまま智裕の隣に立った。
「松田…今のが本当か?」
「……はい。」
「そうか……わかった。じゃあなんで泣いてんだ?」
「それは……俺は…みんなに、嘘ついて、バレて…。」
「怖いか?」
腕で目を隠しながら智裕は頷いた。星野はその茶髪にポンと手を乗せた。
「なら乗り越えろ。そして自分がどうしたいか、考えろ。俺はそれを手伝ってやる。お前らも、一緒だ。」
教卓に戻りながら星野はクラス全員を諌めるように伝える。
「お節介も結構、ここまで1人のことを考えてやれる天然記念物なクラスを俺は誇りに思う。だが、今は松田のことは見守ってやって、松田が本当に助けて欲しい時まで待つこと。」
全員、納得したように小さい声で「はい。」と返事をした。
「そして松田もまた誰かが困っていたら助けてやれ、わかったか?」
「あい……ありがとぉ、ズズッ、ございば……ズズッ!」
「誰かー、松田にティッシュ渡してやれ。そんでとっとと全員下校しやがれ。俺も飯前で腹減ったんだよ。」
星野の一声で本当にクラスは元に戻った。
野村は急いで智裕に駆け寄った。
「松田くん、ごめん…。」
「いいよ……あんがとな……野村。あのさ、今度また気持ちに整理つけたらキャッチボール頼んでもいいか?」
「当たり前だよ、俺でよければ。」
野村はポケットからティッシュを出してそれを智裕に渡しながら笑った。
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