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マツダトモヒロの覚醒(12)
また数秒の沈黙。下を向いた裕也は、かなり恥ずかしそうに言葉を発する。
「あのさ……俺、あんなこと言ったけど……お前の本気度とか、なんか見てさ……俺もちゃんと、お前と向き合わねーとダメだなって……思ってさ。」
「……先輩。」
「だからー…そのー……まぁ、これからは先輩後輩で、よろしくなって…ことだよ!バカ!」
顔を真っ赤にして直倫の顔を少し睨みながら人差し指を向ける。
ドクン ドクン
「先輩……俺、頑張ります。先輩に好きになってもらえるように。」
「は?そ、そ、そんなことさせねーし!てか好きになんねーし!」
「裕也って呼んでもいいですか?」
「はぁ⁉︎ダメだダメ!家族以外はその呼び方禁止!」
「じゃあ、裕也先輩って呼びます。」
「話きいてた?嫌がらせ?」
「裕也先輩。」
また反論しようとする裕也の口は塞がれた。直倫の唇で。
長く、長く、されているようだったけど、それは一瞬。
触れるだけのキスをした直倫は、ふわりと笑った。
「では、また明日。失礼します。」
直倫は一礼するとグラウンドへ走って行ってしまった。
取り残された裕也は頭が真っ白になって、それからわけがわからなくなって、叫んで走って帰宅した。
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