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拡散されるマツダくん⑤
「朝早くに申し訳ありません。今日は智裕くんは自宅待機でお願いします。お父様はもうニュースでご覧になりましたか?」
「あー、昨日近所の子供に見せられたやつと同じものがテレビでも流れてましたね。あれ、智裕 でしょ?」
(近所の子供に見せられた?大介のこと?昨日?あーあのSNSの動画…が、親父なんつった?)
「テレビで流れたぁ⁉︎」
「お前犯罪者みたいにモザイクかかってたぞ。」
「犯罪者⁉︎俺なんもしてねーよ!」
「松田落ち着け、単にプライバシー保護に決まってるだろ。」
智裕はテレビの前にすっ飛んで、リモコンを持ちチャンネルのザッピングを始めた。都合よく流れるわけはないのだが必死に探した。
「今朝からマスコミが何人か学校前に張り込んで朝練で登校した生徒が既に聞き込みをされています。学校としては生徒の安全を第一にしてますので、これから警察と教育委員に協力を要請して追い払うつもりです。なので念の為、智裕くんは自宅待機でお願いします。」
「わかりました。わざわざこんな朝早くにありがとうございます。先生もお気をつけて。」
「お気遣いありがとうございます。ということだ、松田、今日は家から出るなよ。それと明日は俺が迎えに来るからな。」
「今日休みでいいのかよ俺、やったね!」
「馬鹿野郎、課題持ってきてやったから、明日やってなかったらシメるぞ。」
食卓の上に置かれたのは10枚ほどのプリントだった。それを目の当たりにした智裕は星野に「鬼!」と抗議した。
「ほんと先生すいません、このバカが迷惑かけてしまいまして。」
「いえ、智裕くんは被害者ですので…こちらこそ生徒の指導が行き届かずこのような事態になり申し訳ございませんでした。」
星野は改めて父と母に頭を下げて謝罪をした。
「いいんですよ。今時はすーぐほとぼりが冷めますし、ね。」
「そうですよー。それに自慢じゃないですけど、息子の影の薄さは超一級ですから、お気になさらないで下さい。」
両親にもいじられて智裕は愕然とした。星野は出されたお茶を一口飲んで、松田家を後にした。
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