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拡散されるマツダくん⑨
学級朝礼が終わる頃、保健室に何人かの女子生徒がやってきた。教頭は危惧していたように、マスコミに追い回されて恐怖心を抱いた生徒が助けを求めに来た。
女子高生が執拗に知らない大人に問い詰められることはそれだけ恐怖だったということが窺える。
10時に来る予定だった、市から派遣された女性カウンセラーが9時過ぎに駆けつけてくれたので、拓海は手分けして生徒のケアに努めた。そうしていると、マスコミの身勝手さに怒りを覚える。
(こんなに色々聞かれて追いかけられて……そんなにたかが1人の高校生の素性を知りたいものなのかな。)
脳裏に浮かぶのは智裕だった。拓海はその度に「大丈夫」と言い聞かせて、封印することにした。
ひと段落した頃、また生徒がやってきた。
「石蕗先生、いますか?」
「……水上 くん、どうしたの?」
力のない笑顔を向ける水上が保健室に入ってきた。拓海が促して、水上は丸椅子に座った。
もう1人いた女子生徒は、女性カウンセラーと一緒に隣の会議室へ移動したので、保健室には拓海と水上の2人きり。
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