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拡散されるマツダくん(11)

 1限目は急遽全クラスがロングホームルームになった。  2年5組は不穏な空気が漂っていた。教壇に立つ星野の顔も浮かない。 「あー……まーお前らがあんな風にネットで拡散するようなことはしてないと俺は思ってる、が、今日明日はスマホ没収。松田とも学校以外で接触禁止な。」 「え⁉︎今日俺お見舞いに新商品の激マズチョコを流し込んでやろうと思ってたんだけど。」 「大竹、学校からついていく奴もいるかもしれねーだろ。家バレしたら松田の家族にも被害がいくだろ。智之くんだってまだ小学生なんだから。」 「江川(えがわ)、よく言った。お前は明日までそのチビ猿の飼育員な。」  星野は自分のクラスの誰1人として疑わなかった。それが伝わったのか2年5組は安堵した。 「もし、だけどな……もし松田が競技復帰したらもっとネットの扱いは厳しくなるだろうから、今後もあまり変なことすんなよ。というか正直俺も怖くなったよSNSってやつが。」 「ネットもだけど、松田がこんなにすごいっていうのにちょっと引いてるよ。」  若月(わかつき)がそう漏らすと、高梨(たかなし)は少しうつむいた。  高梨の気持ちを知る里崎(さとざき)は心配そうに見つめる。  また少しだけ空気が重くなった時、突然、前方のドアが開いて、男性教師が入ってきた。 「星野先生、少々よろしいですか?」 「はぁ……じゃあお前ら、自習…。」 「いや、このクラスの生徒たちにも話さなければならない。」 「は、はぁ…。」  そう言った星野は教壇を降りて、窓に寄りかかって立った。  代わりに教壇に上がったのは、野球部の顧問で監督の(もり)だった。

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