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遠くなるフタリ⑦
「……拓海さん?」
「あ……あの……オデコ、だよね……。」
「うん……ねぇ、拓海さん?」
振り返ったまま智裕の方を向かない拓海に、智裕は近づいて顔を覗き込んだ。
「拓海さん?どうして、泣いてんだよ。」
「え……?」
「え、じゃなくて、なんかあった?俺、なんかした?」
智裕は拓海の腕を掴んで問い詰めたが、拓海は下を向いて智裕を見ようとしない。
「ねぇ、拓海さん!」
「ここ学校だよ!」
「……拓海、さん?」
滅多に声を荒げない拓海が、激しい口調で智裕を制したので唖然としてしまう。
「何でもない…から……。」
「何でもなくないから泣くんだろ?約束したじゃん、嘘つかないって!」
「何でもないからほっといてよ!」
拓海は智裕を拒絶するように叫んだ。
智裕は怯んでしまい、掴んだ腕を解放した。
「わかったよ……じゃあな……。」
あまりのショックで智裕は冷たい口調で吐き捨てて、猛ダッシュでその場を離れた。
拓海はその場にしゃがみ込んで、嗚咽を殺しながら涙を流した。
「俺じゃ…駄目…なん、だ……。」
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