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さようならツワブキさん①

 教室に帰ってきた智裕(トモヒロ)はまたもや屍になっていた。 (何でだー何でだー、拓海(タクミ)さーん、何であんな……てか俺も俺だよ!何であのまま引き下がってんだよぉぉぉぉぉぉ!) 「松田、俺の授業だからって百面相し過ぎなんだよ。」  バシ、と後頭部を教科書で強く叩かれた智裕は現実に戻ってきた。 「ほっしゃーん……ひどいよぉ…。」 「酷いのはお前の顔だボケ。とっとと顔洗ってこい。」  星野に首根っこを掴まれたら、そのまま廊下に追い出されてしまった。  シーンとした廊下の静寂が今の智裕には怖かった。  言われるがまま、智裕は近くの男子トイレに入って手洗い場で顔を洗った。水を(てのひら)で拭って、目の前にあった鏡で自分の顔が目に入る。 (なんか坊主…久しぶりすぎて……やっぱ変、かな。拓海さん、坊主嫌いだったり……俺、そういうのも全然知らないや。)  智裕は思いっきり頭を振り、頬をパンッと勢いよく叩いて気合を入れ直した。  そして心の中で星野に謝る。    トイレを出た智裕は教室とは別の方向に足を向けた。

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