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さようならツワブキさん②

 ガラッと無遠慮に保健室のドアを開くと、机で仕事をしている拓海がいた。  拓海はビクッと肩をすくめて、驚いた表情で智裕を見た。 「えっと……松田、くん。」 「今、誰もいない、ですか?」 「いない、けど……。」  智裕は焦る気持ちを少し抑えるために呼吸をする。ドアと鍵を閉めて、ツカツカ歩くと、窓のカーテンも閉めた。 「松田くん?どうしたの?」 「。」 「……っ!」  急な智裕の真剣な声と眼差しに、拓海は大きく脈を打った。  一歩、一歩、拓海に近づく智裕に、拓海は緊張して構えてしまう。 「ごめんなさい!」  智裕は慣れたように土下座をした。 「へ?」 「ホントーーーーにごめんなさい!」 「えっと……何か、したっけ?」  呆気にとられ、しかも訳のわからない謝罪を受けた拓海は、困ったように頭を抱える。

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