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さようならツワブキさん⑤

「智裕、くん……遠くなっちゃった……から……。」 「拓海さん…。」  智裕は自然と、拓海を抱きしめた。拓海に告白されたあの夜のように。 「今、拓海さんの至近距離に…俺、いるけど。」 「うん……。」 (心臓の音が、聞こえる…。) 「なんなら拓海さんと1つになってもいいよ。」 「駄目……ここ学校だよ。」 (本当は今すぐに、一緒になりたい…智裕くんを感じたい…。) 「坊主、嫌い?」 「…………嫌いじゃない。」 「その沈黙、ちょっと不安なんだけど。」  拓海は小さく笑った。  智裕はギュッと近づいて、拓海のツムジにキスをする。 (智裕くん、大好きだよ…。)  オデコ、瞼、耳、コメカミ、それから唇へ。 「智裕くん、俺たち、終わりにしよう。」  唇へのキスは拓海の言葉に阻まれた。  その声は震えているのに、見えるのは智裕の大好きな拓海の美しい笑顔だった。

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