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さようならマツダくん①

 10分後、智裕は自分の席に戻っていた。  真面目に教科書を開いて板書をノートに書き写して、至って普通の授業態度なのに、近くの席にいる裕也(ユウヤ)には違和感だった。 _トモ、なんか変じゃね?  裕也はコッソリと高梨(たかなし)にメッセージを送る。  それに気がついた高梨はチラリと智裕を見るが、すぐに目線を戻した。そして書かれた返信。 _なんか、殺気立ってる感じする。  江川もチラチラと智裕を確認する。智裕の顔は、生気を失ったようなものだった。 _ツワブキちゃんとなんかあったんじゃね? _それ一択でしょ _これなんか二股彼女の時とのデジャヴ _フラれたかもね、ツワブキちゃんに。 _え、まじ?でもさ、ツワブキちゃんの方がトモのこと好きだったじゃん! _ヘタレが人を振る度胸なんてないでしょ _もしかしてさっき堪らず襲ったとか _ありえるわー  画面で会話をしていたらあっという間に授業は終わってた。 「トモ、さっきつまみ出されて何処行ってたんだ?」  若干の緊張を隠しながら裕也は智裕に(たず)ねる。  答える智裕は、いつものトボけた口調ではなくなっていた。 「別に、便所行ってただけだし。」 「へ、へー……にしては、長くね?」 「大竹(おおたけ)にカンケーねーじゃん。」 (やばい、トモ普通じゃねーよ。絶対なんかあったコレ。)  それ以上裕也は声をかけられなくなった。

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