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昔のことを話そう【オオタケくん】⑨

「ツワブキちゃーん……。」  裕也はカーテンの向こうにいるであろう、養護教諭の名前を呼ぶ。  呼ばれた拓海(タクミ)はいつもの優しい笑顔で向こう側から中に入ってきた。 「大竹くん、大丈夫?」 「うん、だいぶ良くなったかも……ね、ツワブキちゃん。」 「うん?」 「聞いてた?俺の話…。」 「………うん。」  拓海は辛い感情を隠すような力のない笑顔を裕也に向けた。 「あいつ朝から高梨(たかなし)達にどやされて、ほっしゃんに背中押されて……多分、ツワブキちゃんに土下座でもしたんじゃない?」 「………よくわかるね。」 「でも、俺も見たことない冷たい顔になって帰ってきた………ツワブキちゃん、どうして?  裕也の指摘に拓海は顔を強張(こわば)らせた。目線も逸らしてしまう。  そんな拓海に、裕也は手を差し伸べた。

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