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昔のことを話そう【オオタケくん】⑩
「ツワブキちゃん、きっと大人だからトモのこと考えてくれたんだろ?それか誰かに警告されたか……違う?」
裕也が握る拓海の手は震えていた。拓海は裕也からの問いかけに答えられない。
「多分、このままじゃトモは壊れちまうし壊れるまでアイツは気付かないから……ツワブキちゃん……アイツが壊れたら、治してくれねぇ?俺たちも助けるから、ね?」
「大竹くん……。」
「よいしょ……。」
「あ、ダメだよ…まだ安静にしてないと。」
裕也は起き上がって、ベッドから降りて立ち上がった。
「よし、トモがこんな風になってる今がチャンス…っ!」
「へ?」
裕也はそのまま拓海を力強く抱きしめた。
「ツワブキちゃん、つらかったら俺らの前で泣いていいから。そんで、トモのこと頼むね。」
拓海はその一言にまた心のつっかえが取れて、裕也の肩に顔を埋めて泣いた。
そんな時、シャッ、とカーテンが開く。
「大竹、荷物ー………。」
入ってきたのは裕也の荷物を持ってきた高梨だった。2人の抱き合っている光景を数秒固まって見つめると、黙ってポケットからスマホを出し、シャッター音を鳴らした。
ピロリンッ
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