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昔のことを話そう【エガワくん】④

 俺は当然、余裕で合格した。ついでに言うと全教科満点だった。  この時また頭によぎったのは、あの地獄のような孤独の日々。でも学校に通うためには仕方がないことだった。  だけど、違った。  高校の入学式の日、夕方にまた弟を公園で遊ばせていた時だった。 「おっまえすげーな!ちょー頭いいんじゃん!」  どこからか俺のことを聞きつけたそいつは俺に絡んできた。その目は異様にキラキラしてた。 「全教科満点とか神だろ!仏だろ!俺カテキョみーつけた!」  そいつだけじゃなかった。後ろにぞろぞろと男女の軍団が現れて続々と俺に話しかけてくる。無遠慮に。 「智裕(トモヒロ)!アンタやたらと絡んでんじゃないわよ。」 「マジで全教科満点とかいるんだ、すげーな。」 「補欠合格レベルのアンタとは無縁ね。」 「つーかトモはコネ入学だろ?」 「コネとか言うなよ!立派なスポーツ推薦だ!」 「にーちゃん馬鹿だからふつーにテストしても受かんねーってとーちゃん言ってたぞー。」 「ばーかばーか!」 「お!チビッコ、よくわかってるじゃねーの。バーカバーカ!」 「バーカバーカ。」  俺の弟まで奴に罵声を浴びせていた。こんなの聞いたら母が泣いてしまうだろう。  小1の無邪気な悪口に涙目になったそいつは、俺にヤケクソでこう言った。 「お前同じクラスだろ!名前なんてゆーんだよ!弟の教育くらいしっかりしやがれ!」  俺は初めて友達が出来た。それが松田智裕だった。

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