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昔のことを話そう【エガワくん】⑤

「あれが初めての友達ねー…。」  担任の星野(ほしの)裕紀(ヒロキ)は何かを記録するフリをしながら委員長の一起(カズキ)の話を聞いていた。  一起は苦々しい顔をしていて、テーブルの上で両手を握りしめていた。 「ぶっちゃけお前より弟の方が松田(アイツ)の扱い分かってんじゃね?初対面でバーカ、って……くくくっ。」 「先生、俺結構真面目に話してんスけど…。」 「ごめ……ブブッ!いや、もう、トドメ…が…くくく……っ。」    いつもは品行方正な一起が、松田が絡むと激情的になることを不思議に思った裕紀が一起の昔話を引き出した。  だが、というか、やはり笑わずにはいられなかった。 「普通初めて会ったら名前()くもんだけど……ブブッ!」 「俺、先生の笑いのツボがよくわからないですけど。」 「くくく……も、腹地味に、いてぇ……あと、宮西(みやにし)の顔……ブブッ!」 「今それで笑いますか?」  裕紀は咳をしながら笑いを止めようと努めるが、逆効果で、いつも澄まし顔の宮西が殴られた顔まで思い出してしまった。教師としては最低だと言うように、一起は冷たい声を放つ。

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