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昔のことを話そう【エガワくん】⑥
「あー、すまんな……。」
「いえ。」
「ま、宮西のことだから親も出てこねーだろうし、宮西も言い方っつーのがあったからお互い厳重注意でドローにしとくわ、めんどくせーし。」
「せめて本音を隠してください。」
「ただな。」
笑っていた裕紀が急に真剣な顔になり、一起の右手をそっと上から握る。
「っつ!」
「慣れねーことしてんじゃねーよ。」
「………はい。」
「お前、この前も松田の元カノだっけ?あれカチコミかけに行ったり、去年も無茶して野球部半殺しにしたりよぉ……お前が傷ついてどうすんだっつの。」
「………すいません。」
裕紀は呆れたようなため息をすると、立ち上がり、棚から原稿用紙を出した。
「反省文、成績優秀者に免じて1枚にしといてやるよ。」
「はい。」
一起はテーブルに置かれた原稿用紙を手に取り、椅子から立ち上がった。
そして裕紀に向かって深々と頭を下げる。
「申し訳ありませんでした。」
そう言って指導室を出て行こうとするが、右腕を裕紀に掴まれる。
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