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昔のことを話そう【タカナシさん】②
3年生になって、カッちゃんとユウヤくんとトモヒロくんは少年野球のチームに入った。
リョースケくんは「俺、運動神経きれてるから」って言って何故か料理やお菓子作りを私とヨーコちゃんと一緒に始めた。
それぞれがバラバラになっていっても、昼休みや野球チームの練習がない日の放課後なんかはいっぱい遊んだ。
4年生の1学期、3人が試合に出る、かもしれない、ということで私とヨーコちゃんも応援しに行った。
カッちゃんは代打で出ればヒットを打って、ユウヤくんは盗塁した。だけどトモヒロくんだけは試合に出られなかった。
なのに、夏になってからそれは一変した。
トモヒロくんは最初からマウンドに立って、背番号も「1」を背負って、堂々と投げていた。
「トモヒロくん万年補欠だったんじゃないの⁉︎」
「なんか監督に言われて左で投げたらヤバかったらしいよ。」
右手を左手に変えただけで、人間はあんなにかわるのかと私は驚いた。
多分、この頃からだったと思う。徐々に私がトモヒロくん…智裕 に惹かれていったのは。
それは凛々しいマウンド上の姿ではなく、ちやほやされても何も変わらないところだった。
弱気なことを口にしてもなんだかんだでやり遂げる、その為に努力を惜しまない姿、逃げ出さないところがカッコいいと思ったからだった。
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