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昔のことを話そう【タカナシさん】⑦
高梨が水上を連れ出したのは、例のごとく校舎の裏だった。そこには誰もおらず、今の高梨にはうってつけのシチュエーションだった。
「あの…あなた誰ですか?2年生っすよね?」
「うん。2年5組、高梨って言います。あなたは私を知らなくて当然だけどね、私はあなたに言いたいことが山ほどあるのよ。」
「へー、なんとも熱烈ですね。緊張しちゃうなー。」
水上はさも愛の告白でもされるかのような反応だった。このとぼけ顔にも高梨は憤慨したが、心の奥へどうにか閉じ込めた。
「水上くん、わかってて松田のこと挑発したでしょ?」
水上はこの問いにとぼけようとしたが高梨の目があまりにも真剣だったのでそれをやめた。そして腑抜けた顔を、一旦締めると、怪しく笑みを浮かべた。
「まっつんのことかぁ……そこまでバレちゃってたかぁ。エースの復活が見たいと願う健気で純粋な後輩だと思われた気でいたんだけどなぁ。」
「全部証言取れてんのよ。あの動画流出も君が裏で糸を引いてたんでしょ?」
「何言ってんの?俺は実業団からSNSは禁止されてるんですけど。」
「だったら他の誰かに頼んだんでしょ?それにあんなに一晩でマスコミが騒ぐまで拡散なんてありえないと思うんだけど。」
凄んだ声で高梨が問い詰めると、水上は明後日の方向を向きながら開き直ったように舌打ちをした。
「あれが本来の松田智裕なんだからさ、良くね?」
先ほどよりも低い声に高梨は背筋が凍りそうになったが、ここで引き下がることをしなかった。
「本来の松田智裕?あれが?ふざけんな!」
鼓舞するように高梨は沸点に到達した。
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