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アカマツくんの目標設定⑦

 今度はコンマ2秒で裕也に叩かれた。 「てめぇ何してんだあぁぁぁぁぁ!」 「いや、裕也先輩が可愛かったので、つい。」 「つい、じゃねーよ!2度目だぞバカヤロー!」  ガルルル、と警戒する犬のように睨みつけるが、それも直倫には通じない。なぜなら、その顔は真っ赤になっていたからだった。  そんな直倫の気持ちも知らずに裕也は手の甲で必死に唇を擦る。 「裕也先輩は、何しても可愛いですから観念して下さい。」 「観念出来るかあぁぁぁ!何なんだよお前は……。」 「裕也先輩のことが好きで仕方ない後輩です。」 「答えなくていいよ!」  裕也は直倫が掴もうとする手を逆に掴んで抵抗するが、その手を触って気付いた。 「おい、お前…指先のマメ。」 「え……ああ、年がら年中マメだらけですよ。」 「ちょっと潰れかけてんぞ。これじゃ送球のコントロール狂っちまうだろ。野村に言っとくから明日練習前にテーピングしてもらえよ。」  直倫は不思議に思った。裕也は帰宅部で中学もバスケ部だったと聞いたのに、どうして手の異変に気付いたのかと。

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