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アカマツくんの目標設定(12)
改めての告白に、裕也はまた赤面する。
「俺、県予選の決勝いって……甲子園に行きます……。」
「いや、それでもチームプレーだしお前1人じゃ、」
「県予選の決勝で、ホームラン打ったら、俺の恋人になって下さい。」
直倫が自ら提示した条件を、裕也は吟味する。
「中学時代、ホームラン打ったことあんの?」
「ないです。」
「練習のバッティングはどこまで飛ばせんの?」
「フェンス越えは出来ません。」
直倫は体格の割に長打力はないという事実、裕也は分析してニヤリと笑った。
「いいぞ。」
裕也はその賭けにのった。
(ホームラン打ったことねー奴が高校野球で急に打てるほど世の中甘くねぇもんな!はーっはははは!)
直倫を思い遣る仕草をしながらも、心の中はゲスかった。
「恋人になったら、コレよりもっと凄いことして、ドロドロになるまで先輩を愛しますから。」
「おうおう!何でも来いよ!さーて、そろそろ帰んねーと暗くなるぜー。」
一気に気が楽になった姑息なチビ猿は、立ち上がって衣服に付いた土を払う。
「お前そこでオナってくんだろ?」
本当にデリカシーのない発言。しかし直倫は「はい。」と素直に応えた。
「今日は早く寝て、明日からビシビシ厳しい練習頑張れよー。じゃーなー。」
裕也は何事もなかったかのようにヒラヒラと手を振りながら、藪の中を抜け出した。その背中を見ながら、直倫は小さく笑う。
「本当に単純で可愛い人だ……。」
直倫は翌日からの練習、守備も打撃も吐くほど練習しようと心に決めた。
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