222 / 1000

アカマツくんの目標設定(12)

 改めての告白に、裕也はまた赤面する。 「俺、県予選の決勝いって……甲子園に行きます……。」 「いや、それでもチームプレーだしお前1人じゃ、」 「県予選の決勝で、ホームラン打ったら、俺の恋人になって下さい。」  直倫が自ら提示した条件を、裕也は吟味する。 「中学時代、ホームラン打ったことあんの?」 「ないです。」 「練習のバッティングはどこまで飛ばせんの?」 「フェンス越えは出来ません。」  直倫は体格の割に長打力はないという事実、裕也は分析してニヤリと笑った。 「いいぞ。」  裕也はその賭けにのった。 (ホームラン打ったことねー奴が高校野球で急に打てるほど世の中甘くねぇもんな!はーっはははは!)  直倫を思い遣る仕草をしながらも、心の中はゲスかった。 「恋人になったら、コレよりもっと凄いことして、ドロドロになるまで先輩を愛しますから。」 「おうおう!何でも来いよ!さーて、そろそろ帰んねーと暗くなるぜー。」  一気に気が楽になった姑息なチビ猿は、立ち上がって衣服に付いた土を払う。 「お前そこでオナってくんだろ?」  本当にデリカシーのない発言。しかし直倫は「はい。」と素直に応えた。 「今日は早く寝て、明日からビシビシ厳しい練習頑張れよー。じゃーなー。」  裕也は何事もなかったかのようにヒラヒラと手を振りながら、藪の中を抜け出した。その背中を見ながら、直倫は小さく笑う。 「本当に単純で可愛い人だ……。」  直倫は翌日からの練習、守備も打撃も吐くほど練習しようと心に決めた。

ともだちにシェアしよう!