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雨嵐の日⑤
「今日は早く帰れますね。」
「そうですね。本当は買い物しないといけないんですが、これじゃ無理そうなので、娘を迎えに行ったらすぐに帰らないとですね…。」
拓海は窓の外を見て諦めたようなため息をつきながら軽く笑った。
「夕飯、デリバリーかなぁ……星野先生、おススメとかあります?」
「あぁ、俺は住んでいるのは隣の区なのでこの辺のことはさっぱりで…すいません。」
「そうだったんですね。」
「あー、でも他の先生がデリバリーで釜飯が美味しいって言ってましたよ。早めに時間指定で頼んでみたらどうです?釜飯なら娘さんも食べられるんじゃないですか?」
「いいかも!まーちゃん、最近むき甘栗が好きだから栗ご飯とかあったら喜びそうです。」
「1歳児でむき甘栗…ですか?」
「さつまいもの真空パックのカットあるじゃないですか?あれと一緒におやつで食べますよ。」
「へー。」
2人は拓海の娘の話で盛り上がりながら職員室へ向かう。
道中、すれ違う生徒に「さようなら。」と挨拶をしながら並んで歩く。その姿を見た一部の生徒は2人に聞こえないように注意しながらも「あれお似合いじゃない?」「なんか星野とツワブキちゃんならアリかも。」などと噂をする。
裕紀はそれに対して小さく呆れた溜息を吐いた。
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