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雨嵐の日⑥

 職員室に入ると、他の教職員も各々帰り支度をしていた。裕紀もノートパソコンを鞄に入れ、引き出しからキーケースを出し退勤しようとしたら、あとからやってきた2年の担任教師に呼び止められた。 「星野先生、5組まだ電気ついてましたよ?」 「は?もう10分以上前に解散したんですけど……。」 「ザワザワしてなかったので1人か2人じゃないですか?」 「はぁ……ありがとうございます。ったく、誰だよ。」 「お疲れ様でしたー。」  残っている生徒を叱り飛ばしたらそのまま帰れるように、鞄を提げてクラスの教室に向かった。  階段を上るたび、廊下を一歩進めるたび、雨脚はどんどんと強くなる。  2年の教室の並びに、指摘通り5組の教室に照明が明々とついていた。早足で進んで、開いていたドアから顔を覗かせる。 「おーい、何してんだ?」 「あ……すいません。」  教室には机に座ってなにかを記入している一起が1人だけだった。 「江川、お前なにしてんの?」 「日誌、書いてなかったので書いてました。」 「いやいやいや、今日は1秒でも早く帰れっつの。つか日直の仕事だろ?今日はー…松田じゃねーか。」 「アイツは黙って帰りましたよ。」 (相変わらず、松田に対しては不機嫌だな……顔に出てるし。)  裕紀はツカツカと一起の前まで近づき、まだ書こうとしていた学級日誌を取り上げた。

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